
台湾で最も有名な映画監督といっても過言ではない、巨匠ホウ・シャオシェン(侯孝賢)。
2015年には妻夫木聡さん、忽那汐里さんの出演でも話題を呼んだ、『黒衣の刺客』が第68回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、また英国映画協会発行Sight&Sound誌でも「2015年のベスト映画20」の第一位を獲得したことも記憶に新しい世界的名匠です。
そんなシャオシェン監督による、青春シリーズ不朽の名作『冬冬の夏休み』(1984年)、『恋恋風塵』(1987年)がデジタル・リマスター版として、5月21日(土)より渋谷ユーロスペースにて2週間限定で公開、その後全国順次公開されることが決定致しました!
『冬冬の夏休み(トントンのなつやすみ)』の見所
『冬冬の夏休み(トントンのなつやすみ)』は、まさに台湾版「トトロ」(年代としてはこちらが先!)といった雰囲気。祖父の住む田舎でひと夏を過ごす幼い兄妹トントンとティンティンを通じて、自然の美しさや子供たちの友情を描く牧歌的な作品です。
フランスのナント三大陸映画祭で、前年の『風櫃の少年』に続き最優秀作品賞を2年連続受賞し、アジア太平洋映画祭では最優秀監督賞に輝き、田園風景の中で繰り広げられる懐かしさと優しさに溢れた日々と、子供たちの無邪気な愛くるしさが前面に描き出された、みずみずしい詩情に満ちた傑作!
『恋恋風塵(れんれんふうじん)』の見所
『恋恋風塵(れんれんふうじん)』は、鉱山の村で幼い頃から兄妹のように育った少年ワンと少女ホンの淡く純粋な恋と別れを描いた青春ドラマ。かつての日本にも似た、古き良き原風景の台湾を背景に、二人の、恋と呼ぶにはあまりに近しく、優しい心模様を、抑制のきいた映像で映し出す哀切のラブストーリーは国境を越え、多くのファンを生み出しました。
ワンとホンの故郷の町として「九份」で撮影が行われ、現在は閉山してしまった、かつての炭鉱や金鉱の町としての風景を垣間見ることができます。現在でも、自然と古い街並みが残る美しい町として、海外からも多くの観光客が訪れる人気スポットです。
いずれもホウ・シャオシェン監督の自伝的体験をもとに描き出される小さな日常の中には、その人間が生きた時代や社会、ひいては民族的情感までもが映し出され、「日本」と「台湾」という歴史的な距離感が与える郷愁もあいまって、観る者の心を捉えて離しません。
さらに、今回の特別上映が実現した裏側にも注目!
世界初の新しい試みと予告編の紹介
2作品はともに世界初のDCP上映(デジタルデータによる映画の上映方式)となり、特に『冬冬の夏休み』は台湾の倉庫で発見された状態の悪いネガプリントを、日本の配給会社である熱帯美術館主導のもと、技術力の高い日本で数々の実績を誇るエキスパートである東京光音にて修復を実施、世界に先駆けたデジタル・リマスター版の上映が実現。
日本公開後は、日台協力のもと、リマスター版の海外セールスを予定。外国映画を日本でデジタル・リマスター処理をして、それを世界に向けてセールスするというこの新しい試みは、業界でも注目を集めています。
30年余りを経て、公開当時観たことがあるという方も、そうでない方も、現代に蘇った美しい映像を是非劇場で体感して見て下さい。その映像の一端は予告編でもご確認いただけます。
状態の悪いネガプリントから完全修復される過程が「Before」「After」で再現され、風景や人物の表情に至る細部が鮮やかに蘇った、世界初のデジタル・リマスター版の映像を垣間見ることができます。
元気に駆け回るこどもたちが、おもちゃを競って“亀レース”に興じる様子や、パンツ一枚で飛び跳ねる川原での水泳、どれも熱中している姿が愛らしく、カメラの存在を感じさせない生き生きとしたリアリティがお見事。トントンたちが駆け回る台湾西北部・銅鑼ののどかな田園地帯、ワンやホンの故郷である鉱山の町・九份の風景が切り取られ、当時の人々の息遣いまでも聞こえてきそうなみずみずしい情景が、30年の時を経て今、蘇ります!
作品概要
『冬冬の夏休み』
【STORY】小学校を卒業したトントンは、母が病気で入院したため、妹のティンティンとともに夏休みを田舎の祖父の家で過ごすことになる。祖父はとても厳格だったが、トントンは田舎の子供たちとすぐに仲良くなり、毎日思う存分遊んで過ごす。一方、妹ティンティンはなかなか仲間に加えてもらえず、兄たちにいたずらしたりの日々。やがて台北から父が迎えにくる……。
監督:ホウ・シャオシェン 脚本:ジュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン 原作:ジュー・ティエンウェン
出演:ワン・チークァン、リー・ジュジェン、グー・ジュン、メイ・ファン、ヤン・ドゥチャン
台湾映画/1984年/台湾語/萬賽路影業公司製作/イーストマンカラー/98分/原題:冬冬的假期 ©A MARBLE ROAD PRODUCTION, 1984 Taiwan
『恋恋風塵』
【STORY】鉱山の村で幼いころから兄妹のように育った少年ワンと少女ホン。台北に出た二人は、夏の里帰りを楽しみにしながら、愛すると感じるよりも深く心で結ばれている。やがてワンのところに兵役の知らせが届く。ホンはワンに毎日手紙を書き続けることを約束し、ワンにも自分の宛名を書いた1000通の封筒を託す……。
監督:ホウ・シャオシェン 脚本:ウー・ニエンジェン、ジュー・ティエンウェン
出演:ワン・ジンウェン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー、リン・ヤン、メイ・ファン
台湾映画/1987年/台湾語/中央電影公司(台北)製作/イーストマンカラー/110分/原題:戀戀風塵
©CENTRAL MOTION PICTURE CORPORATION 1987
5月21日(土)より、渋谷ユーロスペースにて2週間限定公開された後、全国順次公開