
大甲媽祖遶境という台湾のかなりディープなイベントに参加してきました。今までも台湾でディープな体験はいくつかしてきましたが、今回は想像を絶するディープさでした。そのため一般的な台湾旅行ではあまりオススメできませんが、台湾と深く関わっていけばいつかは体験する機会があるかもしれないイベントなので、良かったら今回の記事を見ながらその雰囲気を感じて下さい。
ちなみに、「大甲(ダージァー)」とは台中の地名で、今回のイベントの起点となる重要なエリアです。前回の記事では、最近人気の観光地となってきた台湾のウユニ塩湖・高美湿地について書きましたが、高美湿地の最寄り駅・清水駅の二駅先にあるのが大甲駅です。かなり近いので、大甲媽祖繞境に参加する機会があるなら、このイベントが始まる前に高美湿地にも一緒に行くと良いでしょう。
台湾ウユニ・高美湿地は最近日本人にも人気ですが、今回私が台中に来た本当の目的は大甲媽祖繞境に参加することでした。高美湿地は正直、オマケです。あの美しい高美湿地がオマケになってしまうほどの凄まじいイベント、大甲媽祖繞境について今回の記事では紹介していきます。
目次
大甲媽祖遶境とは
大甲媽祖遶境とは、毎年旧暦の3月に行われる媽祖の一大行事です。2017年は3月25日から4月2日まで九日間連続で行われました。(3月24日23時開始)。
ちなみに、媽祖(マズ)は、台湾中で厚く信仰されている道教の神様で、航海の女神です。
どのようなイベントなのかと言えば、この媽祖が九日間かけて台湾中部各地のお寺を訪れるというものです。参加者は媽祖と一緒に九日間歩き続けます。大甲媽祖のホームページには何日目にどこのお寺に訪れるかということが書いてくれています。
これを見れば分かるように、九日間で歩く距離は相当のものです。台中の大甲から始まり、何と県をまたいで彰化県、雲林県さらには嘉義県の新港まで行った後に再び雲林から彰化、台中へと戻ります。私は1日目で大甲から台中市内に戻る遥か手前でギブアップしたのでその距離のすごさが分かります。(数時間は歩いた後、この後書くようにお助けの車にも乗せてもらったのですが、そこからバスに乗って台中市内までは1時間ほどかかりました)
もちろんほとんどの人は全部歩く訳ではないのですが、中には九日間歩き続ける強者もいます。この巡礼の通り道にある家庭などはこのイベントに協力的で、歩き続ける人にはトイレやシャワー、寝床を無料で貸してくれるようです。また、この後紹介するように無料で飲食を提供してくれるので参加者は食事の心配をする必要もありません。
スタート地点は大甲のお寺!
大甲媽祖遶境は、大甲区にあるお寺(鎮瀾宮)で、3月24日の夜11時に始まります。
このお寺の最寄り駅は大甲駅で、ここから歩いてすぐに行けます。大甲駅に行く場合は以下の時刻表で目的地を台中地区(臺中地區)の大甲にして時間を調べて下さい。
⇒台湾鉄路の時刻表検索(中国語)
台湾ウユニ塩湖の記事で書いた、「清水駅への行き方」と同じ電車に乗るため、本数がかなり少ないので気をつけて下さい。清水駅の次の次の駅が大甲駅です。
大甲駅の駅前は有名夜市のように人ごみや屋台がぎっしりで賑やかでした。しかし、このように賑やかなるのは、1年でこのイベントが始まるこの日だけで、普段は何もない静かな駅だそうです。
歩いてすぐにイベントの起点であるお寺「大甲鎮瀾宮」に到着。
まだ始まる4時間ほども前だったにもかかわらず、既にすごい人です。このお寺の前では無料の飲料と具がたっぷり入ったお粥がふるまわれていたので食べました。おかわりも自由で、一緒に来た台中の友人は2杯目をもらっていました(笑)
お寺の中に入ると、まず線香があったのでそれに火を付けて各神様に挨拶をしながら供えました。火のついた線香を持ち歩きながら、ものすごい人ごみの中を進んだので結構危ないです。しかし、その火以上に混雑した場所で人ごみに押しつぶされそうになったときは本当に身の危険を感じました(笑)
神様の写真を撮っていると怒られました。撮影は自由だけど、先に自分の名前を名乗って撮らせて下さいと言わなければならないそうです(笑)
外に出て、イベントが始まる場所に行くと、既に多くの人が集まり、各地のお寺からやってきた人たちの挨拶が派手に行われていました。
台湾お祭りではおなじみの爆竹もこの日は特にすごい。火事になりそうなぐらいの勢いで爆発させてきます(笑)
開始時刻まで周辺散策することに
イベント開始地点の人ごみの中で何時間も待っているのも辛いので、とりあえず周辺散策しに行くことにしました。周辺とは言え、どこもすごい人でどんどん人は増えて行きます。
屋台で食事をすることにしました。以下の「粉腸」を売っているお店は有名なようです。屋台のスタッフは猛スピードでこの食べ物を作っていたので、見ているだけでも楽しめました。今まで食べたことがないような食べ物でしたが、もちもちしてピリ辛、少し肉も入っていて美味しかったです。
飲み物が欲しくなってきたので、以下の「楊桃汁」と書いてあるお店へ。この飲み物もこの辺では有名なようです。こちらも初めて口にした味だったので、美味しいのか微妙なのかよく分からない味でした(笑)
周辺の民家は参加者に協力的!
スマートフォンの充電が切れそうになってきて、少し困っていたところ、台中の友人は何と周辺の民家に入って充電させてもらっていました!勝手に人の家に上がり込んで充電させてもらうなんて図々し過ぎない?と一瞬思いましたが、この日に限っては特別で、参加者に対しては色々なおもてなしをしてくれるようなのです。充電させてもらった上にコーヒーまで出してもらって申し訳なくなりました。
他にも家に入って休憩させてもらいに来る人なども次々に現れました。ただし、基本的には台中以外からはるばるやって来た人に対するおもてなしのようです。私たちは台湾の高雄からやってきたと言ったので、色々お世話になることができたのでしょう。(私は本当に高雄からやってきたので問題ありません)
この家の前でも次々と各地のお寺からの参加者が通って行き、ありえないぐらいの爆竹を爆発させていました。日本のアニメが描かれた神輿なども次々に現れ、もう訳が分からなくなってきます(笑)爆竹の量はどんどん多くなり、すごい爆風が襲ってきました。私は普段大音量の爆竹にビビることは普通の人より少ないのですが、さすがに音が大きすぎて耳を塞がないと鼓膜が破れそうになりました。この時、民家の人はスムーズにマスクを配ってくれたので、呼吸が楽になりました。さすが慣れていますね(笑)
充電して待っているうちに、もはやイベント開始地点には戻れないほどの人ごみになりました。そこで、イベント開始までこの家で待つことにしました。イベントは夜11時に始まるので、そこから神様「媽祖」と一緒に参加者は一斉に歩き出し、この家には11時30分頃に媽祖が到着するようです。なので、そこから一緒に歩き始めればOKということです。
いよいよイベントスタート
夜11時になるといよいよイベントスタートです!開始地点から少し離れた場所にいたので、スタートの合図である大きな花火は民家のテレビで見ることになりました。すぐ近くのイベントがテレビで生中継されているというのはなかなか不思議な感じです。
イベントがスタートしたので、ここで民家とはお別れして、外に出て媽祖がやってくるのを待ちました。
媽祖が通り過ぎたのを見届けた後、参加者は一斉に歩き出しました。開始直後はやはり人が密集しているだけあって、とにかくすごい人ごみで、ときどき押しつぶされそうになるほどでした。
※ちなみに参加者は台湾中から集まるため、この日の電車チケットは確保が難しい場合もあります。私は1週間ほど前に特急電車のチケットを予約しようとしましたが、売り切れていたので新幹線に変更しました。
イベントの通り道では無料の飲食スポットがいっぱい!
少し歩くと、食べ物を無料で出してくれるスポットに到着しました。ここでお腹が空いていたら食事をもらえますが、通り過ぎる人の方がかなり多かった気がします。この先にもたくさんの飲食スポットがあるわけなので、無理に食べる必要はないでしょう(笑)
ここで食事を提供してくれる人は、全て自腹を切っています。なので、感謝しなければいけませんね。台中の友人は食事をもらうとき、丁寧に頭を下げて感謝の意を示していました。「いつかお金持ちになったら、ここで食事を出す人になりたい」とも言っていました。
この先には食事はもちろん、飲み物を提供するスポットもありましたし、デザートを提供するところまでありました。ペットボトルに入った水を配っていた場所もあり、まるでマラソン大会の給水スポットのようでした。
こんな飲食スポットが九日間、至る所にずっとあるんだそうです。だから参加者は食事の心配無用なのです。
媽祖がいる場所では花火が打ち上げられる
歩いていると定期的に、前の方で花火が打ち上げられるのが見えました。これは、媽祖が今いる場所で打ち上げられるんだそうです。媽祖が今どの辺りにいるか一目で分かるというわけです。
ちなみに、媽祖にはGPSも付いています(笑)以下のホームページでは媽祖が今どこにいるのか確認もできます。
⇒媽祖の現在地が分かるWebサービス(2017年)
さらに、媽祖の現在地が分かるスマートフォンアプリまであるのだそうです。伝統的な神様と最新技術の融合、実に自由で面白いと思います(笑)
一段と大きな花火も打ち上げられる
上で媽祖の現在地が分かる花火を紹介しましたが、それとは関係なく、めちゃくちゃ大きな花火ショーもあります。
この花火が始まったときは、歩いている人たちは皆足を止め、この花火を鑑賞していました。
花見はだんだん凄くなってきて、ピーク時の連続打ち上げ花火は凄すぎました。そんな感じで盛り上げてくれたので、終わったときには自然と拍手が沸き起こります。そして再び歩き始める雰囲気となったとき、また花火が始まりました(笑)
まだあるんかい!という感じで、完全に一本とられました。しかもさっきの凄かった花火より更にすごい!この花火は凄すぎて、写真は撮る余裕がありませんでした。媽祖の顔やこのイベント名に関する花火アートもありました。今まで見たどの花火より凄かったです。
このような花火は、このイベントがある九日間、毎日打ち上げられるんだそうです。
※花火は毎日ありますが、凄い花火は毎日ではありません
媽祖が訪れるお寺の様子
そして再び歩いていくと雨が降ってきました。レインコートを持ってなかったので辛かったです(笑)この日は、路上で寝る予定だったのですが、雨が降ったので厳しくなりました。
その後、媽祖が訪れるスポットであるお寺に到着。媽祖が訪れたときに参加者が一斉に興奮して写真を撮る姿は、まるで大物芸能人が現れたときのファンの反応です(笑)
その後、再び歩き始めます。トイレを探しましたが、トイレスポットはどこも長蛇の列。一時間ぐらい立って順番を待っていました…。さすがに疲れて来たところに、お助けの車がやってきてました!トイレに並んでいた人は喜んで急に元気になり、一斉にトラックの荷台に乗りました(笑)
そのトラックはまた別のお寺まで連れて行ってくれました。数時間歩き続け、トイレで1時間立ちっぱなしでさすがにしんどかったので、ここで仮眠することにしました。
仮眠スポットは外にあり、ダンボールをしいている場所に横になって寝ている人もいましたが、私には横になる勇気は出ませんでした(笑)特にこの日は雨も降ったから虫が多いし…。
そこで、椅子に座った状態で仮眠をとることに。1時間程うとうとと寝ていると、リュックに大量の虫が付いていました!私のリュックを布団にして虫が寝てる感じです。何かこれ以上寝たくなくなったので、再び歩くことにしました。
その後、バスが動く早朝になったので、それに乗って台中市内まで戻りました。バスで1時間近くかかりました(笑)歩いて帰るつもりだったけど、絶対無理ですね、今更地図を見て気づきました。
まとめ
こんな感じで、かなり楽しいイベントでしたが、ずっと歩き続けるので体力も相当使います!最後はギブアップするような形になったのが悔やまれます(笑)
実際、九日間歩き続ける人もいる訳なので、私もいつか時間と体力に余裕ができたら挑戦したいです。ほとんどの人は途切れ途切れで参加したり、少しだけ参加したりするのだと思いますが。
今まで書いた通り、少し参加するだけでも台湾のディープさが味わえる良いイベントでした。また来年以降も、参加したいですね。
※大甲のすぐ近くにある最近人気の観光地、台湾のウユニ塩湖・高美湿地については以下の記事で紹介しています。
⇒台湾のウユニ塩湖・高美湿地は予想以上の絶景!おすすめの見所と行き方を詳しく紹介